宅録ナレーターはじめ、しゃべるお仕事に必要不可欠な「滑舌のよさ」。

私の元にも「どうやったら滑舌が良くなりますか?」という相談が多く寄せられます!
滑舌を良くする裏ワザはなくて、やっぱり毎日の地道な練習が一番です。
- 滑舌が良くない・・・
- うまく舌がまわらない・・・
- なんだか調子が出ない・・・
そんなときはぜひ、基礎に立ち返って「外郎売り」をやってみましょう。
宅録ナレーターや声優を目指す方の練習用に「外郎売り」をご紹介しますね。
外郎売り(ういろううり)とは

外郎売りとは、滑舌、発声練習によく使われる有名な売り口上です。
もともとは歌舞伎十八番のひとつですが、現在では演目ではなく、劇中に出てくる長台詞を指すことがほとんど。

声優、ナレーターの基礎レッスンには、必ずと言っていいほど出てくるので、ご存知の方も多いのでは?
内容をざっくり説明すると「外郎」という薬を販売するためのセールストークです。
外郎は仁丹とよく似た形状、原料なのですが、起源や歴史を調べると楽しいですよ。
外郎売りは宅録ナレーターの滑舌、発声練習にも最適
外郎売りは、宅録ナレーション収録前のウォーミングアップにも最適です。
最近では、オンライン配信やzoomを使う機会も増えているので、人前で話す、もしくは撮影の前にもぜひやってみてくださいね。
意識してほしい点としてはこちら。
- 速さよりも滑舌のクリアさを重視
- 言いづらい箇所ほど、丁寧に
- 無声化もしっかりと
- 過度な抑揚はつけない
つい早口でがんばりたくなるのですが(笑)まずはゆっくりはっきりと、発音できるように読みましょう。
外郎売りにもいろんな種類がある!?
外郎売りはさまざまな流派、パターンが存在していて、アクセントや読み方、表記が多少異なります。
- 一粒(いちりゅう、ひとつぶ)
- 健やかになって、健やかになりて
- 舌(した、ぜつ)
- 唇(くちびる、しん)
- 細溝(ほそみぞ、ほそどぶ) など
切る箇所や、続けて読む箇所などもそれぞれ異なります。
ひとまず私が学んだものを載せておきますね。

「私が習ったものと違う!」という場合は、どうぞそちらの読みを適用してくださいませ!
今ではもう「どれが正解」と判断するのは難しいので、ご自身が習ったもの、しっくりくるものでよいと思います。
送り仮名、句読点は、文字としての見やすさ重視で振ってあります。

翻訳は本当に「ざっくり」した内容です。
ガチ勢の方はぜひご自身で詳しく調べてみてくださいませ〜!
外郎売りの本文

拙者親方と申すは、お立ち合いのうちにご存知のお方もござりましょうが、お江戸を発って二十里上方、相州小田原一色町をお過ぎなされて、青物町を登りへおいでなさるれば、欄干橋虎屋藤衛門、只今は剃髪致して、円斉となのりまする。
私の主人ですが、お集まりの皆様にはご存知の方もいらっしゃいますよね。
江戸から京都方面に80kmほど、小田原一色町を過ぎて、青物町をさらに行くと、欄干橋の虎屋の藤衛門、今は坊主頭になって「円斎」と名乗っています。
元朝より大晦日まで、お手に入れまする此の薬は、昔、ちんの国の唐人、外郎という人、わが朝へ来たり。
帝へ参内の折から、この薬を深く籠め置き、用ゆる時は一粒ずつ、冠のすき間より取り出す。
よってその名を帝より、「とうちんこう」と賜る。
即ち文字には、「頂き、透く、香い」と書いて「頂透香」と申す。
元日から大晦日まで手に入るこの薬ですが。
「ちん」という外国から「外郎」という方がいらして、帝へ参内した時にも大事に持っていたのです。
使うときは一粒ずつ、冠のすき間から取り出していたので、帝から「頂透香」という名前を賜ったのでした。
只今はこの薬、殊の外、世上に広まり、方々に偽看板を出し、イヤ、小田原の、灰俵の、さん俵の、炭俵のと、いろいろに申せども、平仮名をもって「ういろう」と記せしは、親方円斉ばかり。
最近ではこの薬が、想像以上に世の中に広まって、いろいろな場所で偽看板が出ています。
小田原なのに、灰俵、さん俵、炭俵などいろいろ書いてあるようです。
平仮名で「ういろう」と表記したのは店主の円斉で、それのみが本物です。
もしやお立ち合いのうちに、熱海か塔の沢へ湯治にお出なさるるか、または伊勢御参宮の折からは、必ず門違いなされまするな。
お上りならば右の方、お下りなれば左側、八方が八つ棟、表が三つ棟玉堂造り、破風には菊に桐のとうの御紋を御赦免あって、系図正しき薬でござる。
もしかすると、お集まりの皆さまの中で、熱海か塔の沢へ湯治に行くか、お伊勢参りの際に、お店に立ち寄られる場合には、間違えないようにしてくださいね。
これから京都方面に向かうなら右側、東京方面なら左側です。
帝から「菊に桐のとうの御紋」を使うお許しもいただいた、由緒正しき立派な店となっています。
イヤ最前より家名の自慢ばかり申しても、ご存知ない方には、正身の胡椒の丸呑み、白川夜船、さらば一粒食べかけて、その気味合いをお目にかけましょう。
先ずこの薬をかように一粒舌の上にのせまして、腹内へ納めますると、イヤどうも云えぬは、胃、心、肺、肝がすこやかになりて、薫風喉より来たり、口中微涼を生ずるが如し。
魚鳥、茸、麺類の食い合わせ、その外、万病速攻ある事神の如し。
先ほどから、店の自慢ばかり申しても、知らない方にとっては、胡椒を丸呑みしても辛さがわからないようなもの。
なので、私が一粒食べまして、その効果をご覧いただきますね。
まずこの薬を一粒、舌の上にのせて飲み込みますと、なんと言いますか、体の中から健やかになって、喉から爽やかな風がくるような、口の中も涼しく感じます。
食べ合わせから来る不調や、どんな病気にもすぐに効く、まさに「神のごとし」効き目です。
さて、この薬、第一の奇妙には、舌のまわることが銭ごまが、はだしで逃げる。
ひょっと舌がまわり出すと、矢も盾もたまらぬじゃ。
この薬、舌がよく回るようになるのです、くるくる回る銭ごまも、はだしで逃げ出すほど。
舌が回りだすと、もうじっとしてはいられません。
そりゃそりゃ、そらそりゃ、まわってきたわ、まわってくるわ、アワヤ咽、サタラナ舌に、カ牙サ歯音。
ハマの二つは唇の軽重、開合さわやかに、アカサタナハマヤラワ、オコソトノホモヨロヲ。
- あ、わ、や:喉音
- さ、た、ら、な:舌音
- か:牙音
- さ:歯音
- は、ま:唇の開閉
それぞれ、どのように発音する言葉も言いやすくなるよ、という意味。

ここから先は、意味があるというよりも、早口言葉や韻を踏んだ表現がメイン!
一つへぎへぎに、へぎほしはじかみ。
盆まめ、盆米、盆ごぼう。
つみ蓼、つみ豆、つみ山椒。
書写山の社僧正。
粉米のなまがみ、粉米のなまがみ、こん粉米の小なまがみ。
繻子ひじゅす、繻子、繻珍。
親も嘉兵衛、子も嘉兵衛、親かへえ子かへえ、子かへえ、親かへえ。
古栗の木の古切り口。
雨合羽か、番合羽か。
貴様の脚絆も皮脚絆、我等が脚絆も皮脚絆。
しっ皮袴のしっぽころびを、三針はりながにちょと縫うて、縫うてちょとぶん出せ。
しっぽころびとは、「しっぽ転び」ではなく「綻び」。「ほころびを縫う」という文章ですね。
かわら撫子、野石竹。
野良如来、野良如来、三のら如来に六のら如来。
一寸先のお子仏に、おけつまずきゃるな。
細溝にどじょにょろり。
京の生鱈、奈良なま学鰹、ちょと四、五貫目。
お茶立ちょ茶立ちょ、ちゃっと立ちょ茶立ちょ、青竹茶筅でお茶ちゃっと立ちゃ。
来るわ来るわ、何が来る、高野の山のおこけら小僧。
狸百匹、箸百膳、天目百杯、棒八百本。
「天目」とは、すり鉢型の茶碗のことで、茶の湯などで使います。
武具、馬具、武具、馬具、三ぶぐばく、合わせて武具、馬具、六ぶぐばぐ。
菊栗、菊栗、三菊栗、合わせて菊栗、六菊栗。
麦、ごみ、麦、ごみ、三麦ごみ、合わせて麦、ごみ、六麦ごみ。
あの長押の長薙刀は、誰が長薙刀ぞ。
向こうの胡麻がらは、荏の胡麻がらか、真胡麻がらか、あれこそほんの真胡麻がら。
がらぴいがらぴい風車。
おきゃがれこぼし、おきゃがれ小法師、ゆんべもこぼして又こぼした。
たあぷぽぽ、たあぷぽぽ、ちりからちりから、つったっぽ。
たっぽたっぽ一丁だこ、落ちたら煮て食お。
煮ても焼いても食われぬものは、五徳、鉄きゅう、かな熊童子に、石熊、石持、虎熊、虎きす。
中にも東寺の羅生門には、茨木童子が、うで栗五合つかんでおむしゃる。
かの頼光の膝元去らず。
金熊童子:酒呑童子の配下の赤鬼。大江山四天王のひとり。
茨木童子:同じく酒呑童子の配下の鬼。
頼光:源頼光。京を荒らす酒呑童子たちを追い払ったとされる。
鮒、金柑、椎茸、定めて後段な、そば切り、そうめん、うどんか愚鈍な小新発地。
小棚の、小下の、小桶に、こ味噌が、こあるぞ、こ杓子、こ持って、こすくって、こ寄越せ。
おっと合点だ、心得たんぼの川崎、神奈川、保土ヶ谷、戸塚は走っていけば、やいとを擦りむく、三里ばかりか、藤沢、平塚、大磯がしや、小磯の宿を七つ起きして、早天早々、相州小田原とうちん香。
やいと:お灸をすえること
「大忙し」と大磯をかけたり、言葉遊びが見られます。
早天早々:早朝、明け方
隠れござらぬ貴賤群衆の花のお江戸の花ういろう。
あれあの花を見て、お心をおやわらぎやという。
産子、這子に至るまで、この外郎の御評判、ご存知ないとは申されまいまいつぶり、角出せ、棒出せ、ぼうぼう眉に、臼、杵、すり鉢、ばちばちぐわらぐわらぐわらと、羽目を外して、今日おいでのいずれも様に、あげねばならぬ、売らねばならぬと、息せい引っぱり、東方世界の薬の元締め、薬師如来も照覧あれと、ホホ敬って、ういろうは、いらっしゃりませぬか。
赤ちゃんに至るまで、この外郎の評判を知らないとは言わせませんよ。
今日いらした皆さまにお手に取っていただくため、「売らねばならない」と使命を持って力の限りお伝えします。
薬にまつわる仏である、薬師如来さまも、ぜひともご覧くださいませ。
「外郎」は、いかがでしょうか?
「外郎売り」宅録ナレーターの滑舌、発声練習にマストな教材をご紹介まとめ

いかがでしたか?
「外郎売り」はウォーミングアップや、日々の滑舌練習に最適です。
ただ早口で読んだり、滑舌練習に使うだけではなく、意味を理解して、伝える意識を持つと、よりクオリティの高い練習になります。
やみくもで、目的のない練習をしても、あまり効果がないのですよね。
「ナレーション」というと、ただ文章を追いかけて、読み上げるだけの方もいるのですが、そうではなく。

えっ!?文章をそのまま読み上げればいいんじゃないの??

確かにそうだけど、ただ読み上げるだけでは足りないかなと!
ナレーターには「意味をしっかり理解して、相手にわかりやすく伝える」ことが求められます。
気になる言葉を調べたり、背景を学んだりすると、話す言葉に深みが出てくるもの。
単なる教材として使うだけでなく、ぜひ教養を深めるためにも活用してみてくださいね。

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